野口クリニック 泌尿器科、皮膚科
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トピックス


包茎について

AUA(アメリカ泌尿器科学会)の抄録に、包茎についての話題があったので、ご紹介します。

野口クリニック包茎についてのトピックス ミイラ時代の古代エジプトでは、割礼は儀式としてが行われていました。割礼を受けたのは王族、貴族、聖職者に限られており、思春期の後期に行われました。また聖職者が外科医を務めていました。

 ミイラ時代よりもっと前の有史以前のエジプトでは全ての男性が環状切除を受けていました。

 外科用ナイフは古代王朝では黒曜石または火打石製、新王朝では金属製で、麻酔はほとんど使用しなかった。助手の役目は「患者を固定し、気絶させないようにすること」でした。傷の治癒と感染防止のため、糖蜜を混ぜたオイルを塗りました。

 時代が下がりギリシア時代以降は、儀式よりもむしろ衛生観念から
行われるようになりました。

(院長のコメント)
最近若い人の包茎が目立ちます。亀頭包皮炎を起こしたり、カンジダ性皮膚炎を起こしたり、尖圭コンジロームを起こしたりするので、手術を勧めています。もちろんちゃんと麻酔もしますし、鋭利なメスを使います。縫合の時に使う糸も、吸収性の糸です。でも実際に手術を受ける人は、以前より少なくなったようですね。



 
ダイエットに王道なし
 「選択」という雑誌があります。ちょっと固いけれど、興味深い話題満載の雑誌です。その2003年11月号に、ダイエットに関する話題がありましたので、ご紹介します。

ダイエットについて ダイエットに使えるということで、最近話題なのが「カテキン」含有のお茶。
カテキンには脂肪を分解する作用があり、それがダイエットにつながるわけです。でもここに落とし穴が・・・。

 動脈硬化や癌を抑える抗酸化作用が注目されているカテキンも、大量だと細胞内のDNAを傷つけ、癌化させる可能性が指摘されたのです。

 2003年日本癌学会で、三重大学医学部のグループが、緑茶に含まれる濃度の40倍の濃度のカテキンを、細胞に付与したところ、通常の2倍の割合でDNAが傷ついたという実験結果を報告、過剰なカテキン摂取は逆効果になる可能性を示唆しました。  
 
 「食べる量を減らし、体を動かすよりも、お手軽なダイエット方法などない」と結んでありました。

(院長のコメント)
 私自身一時88kgありました。これが原因で腰痛に悩まされ、一念発起「食べる量を減らし、運動を続ける」ことで、75kgまでダイエットしました。その後1〜2kgは戻りましたが、なるべくこの体重を維持するよう努めてます。
 もともと体を動かすのは好きなので、運動はそうつらくはなかったですが、食事制限はやっぱりつらかったですね。極端な食事制限は簡単に見てくれの体重を減らしますが、それは筋肉量を減らす事にもつながります。筋肉量を減らしてしまっては、食事制限をやめれば、容易にリバウンドしてしまいます。
 「ダイエット=体重減少」と考えず、「ダイエット=体脂肪量の減少と筋肉量の増加」と考えると良いと思います。それにはやはり食事制限と、歩いたり走ったりという「エアロビクス的な運動」と、筋肉量を増やす「筋肉トレーニング」が不可欠。
 やっぱり「ダイエットに王道なし」といったところでしょうか。




当院での急性尿道炎の傾向
 

 平成12年7月から9月に期間に、当院を受診された49人の尿道炎患者さんの傾向です。少し古いデータで恐縮ですが現在も同じような傾向です。

1)患者さんは26〜30歳が16人(33%)と一番多く、ついで30〜35歳が10人(20%)とそれに次ぐ。

2)感染源を風俗店、パートナー、行きずりと分けると、風俗店が23人(47%)、パートナーが13人(27%)、行きずりが5   人(10%)であった。感染源の明らかでない患者さんも8人(16%)存在した。

3)風俗店で感染した場合は淋菌の割合が多く(60%)、パートナー、行きずりの女性から感染した場合は、クラミジアの割  合が多かった(44%)。また風俗店での感染で、淋菌とクラミジアの両方に感染した患者さんも、13%存在した。

4)排尿痛、尿道からの膿の排出などの症状を主訴に来院されるのは、全体の65%を占めるが、それ以外の症状(何となく不愉快、全く無症状など)の患者さんも35%存在した。

5)当時頻用していた抗生剤が無効の患者さんが49例中7例(14%)あった。全例淋菌であった。

6)来院回数からみると、初診だけで来院されない患者さんが12%、初診と再診1回の患者さんが35%、初診と再診2回   の患者さんが27%、初診と再診3回の患者さんが16%であった。

 当院では初診時に起炎菌の検査を行い、再診1回目にその結果の説明をし、起炎菌に合わせた適切な抗生剤に変更します。再診2回目に起炎菌の再検を行い、再診3回目にその結果を説明して、略治としています。ですから74%の患者さんがきちんと治癒判定されないまま、治療を中断してみえるわけです。特にクラミジア陽性の患者さんにその傾向が強いようです。

(院長のコメント)
 当院の生のデータです。私が医者になった頃、急性尿道炎の治療に難渋するということはありませんでした。しかし現在は本当に悩むことが多くなりました。
 症状も軽微だし、尿を顕微鏡で見ても白血球はほとんど出ていない。さてこの患者さんに抗生剤を投与すべきか、検査結果を待つべきか。当院では検査センターに頼んで淋菌、クラミジアの結果は中一日で届くような体制にはしてあります。
 さらに抗生剤を選ぶ時、本当に悩みます。それは抗生剤の効かない淋菌の増加しているから。

 淋菌もクラミジアも陰性、でも尿中に白血球が出ている時も困ります。ウレアプラズマという起炎菌の可能性もあるのですが、一般の医院ではこの検索ができないし、保険も通ってません。医療が社会の進歩についていくのは大変です。
 




エイズ、対岸の火事?
 4月になってから、3人ほど「エイズ検査をして欲しい。」という患者さんがみえました。「エイズに対する関心が高まってきたのか。」と、ホッとする一面もあります。「選択」2月号(Vol.30,No2,118〜119ページ)にエイズに関してよくまとまった記事がありましたので、ご紹介しておきます。

1)先進国の中でエイズ感染者、エイズ患者数の増加のやまないのは、日本だけ。

2)「東京都南新宿検査相談室」を訪れた人は、昨年1年間で約9000人。そのうちHIV抗体陽性を示す割合が、昨年始め  て1%を越えた。

3)感染者、発症患者の累計は、約8700人だが、 その約4〜5倍の感染者がいるものと推定される。  このままいけば  2010年には累計5万人に達する怖れがある。

4)深刻なのは、異性間性交渉による感染者の増加と低年齢化。以前は少なかった異性間性交渉での感染が半分を占め  また感染者の6割を20〜30歳代が占める。

5)このような低年齢化の背景には、性器クラミジア、性器ヘルペスなど性行為感染症の蔓延がある。HIVの感染力はそれ  ほど強くない。さほど感染力の強くないウイルスが世界中に広まった原因の一つに、STDの触媒効果がある。

6)クラミジアに感染するとできる糜爛(びらん)部分は出血しやすく、その部分からHIVが侵入しやすくなる。米国立疾病防  疫センターのデータでは、糜爛ができたSTD患者のHIV感染リスクは、男性で10〜50倍、女性で50〜300倍にも上   昇する。

7)今のところHIV感染を防ぐ有効な手立てはコンドームしかないが、国内のコンドームの出荷量は1990年の7.4億個か  ら2000年に入って4億個台に減少しつづけている。

(院長のコメント)
 さてこれでも「対岸の火事」といえるでしょうか。


さまよえる星「ミシュラン」
 「ミシュラン」といえば、フランス料理界のバイブルともいえるガイド誌ですが、その権威が揺らいでいるという記事が、「選択」4月号(APR.2004,vol.30,No4)にありました。簡単に内容をご紹介すると、

1) 「ミシュラン・ガイド」は自動車の発達を背景に、タイヤ・メーカーのミシュラン社が旅行と美食を結び合わせたガイドとして、1900年に創刊された。最高の三つ星は「わざわざ行く価値がある」、二つ星は「遠回りしても立ち寄る価値がある」、一つ星は「大変美味しい料理」というランク付け。読者は毎年新刊の発行を待ちわび、また料理人にとって、星獲得は一流シェフの証明である。

2)16年間にわたってミシュランの調査員だったパスカル・レミ氏が「ミシュランは読者を欺いている」と告発した。その告発によると、フランス国内1万ヶ所のレストランを担当する調査員はかつてと比べて半減し、現在はわずか5人。1人の調査員が調査できるレストランは年間200軒がせいぜい。昔は2年に一度の調査だったのが、今では3年に1度しか訪れないレストランもある。
 また有名シェフが経営する三ツ星レストランは、降格した場合の反発の大きさを考慮してアンタッチャブル。1/3の三ツ星レストランがその最高の評価にそぐわない内容である。

3)この告発に対してミシュラン側は次のように反論している。フランス以外の欧州6カ国で出版しているガイドブックのために、全体で100人の調査員を抱えている。これらの調査員がフランスのレストランを調査することもあるので、平均して1年半に一回は全レストランを訪れている。
また「レミ氏は仕事の内容は明かさないと約束を破って本を執筆し、出版断念の交換条件にお金を要求した。」

4)2000年に英国人のデレック・ブラウン氏がミシュランの編集長となったが、彼の就任以後ミシュランは大きく変わった。
2004年版では三つ星は27、二つ星は67、一つ星は410。これに対し1992年版では三つ星は19、二つ星は6、一つ星は47しかなかった。星の総数ではこの12年間に72から504と7倍となっている。
 これにはレストランのメディア戦略にブラウン編集長が乗ったという側面もある。ホテルが話題作りとしてレストラン部門にてこ入れし、名のあるシェフを引き抜き、インテリアも著名デザイナーにまかせるなどの、メディア戦略をしてきた。ブラウン編集長はこうしたレストランを積極的に評価、星を与えてきた。
 メディア戦略に乗ったレストランが脚光を浴びる一方で、堅実なレストランの多くが、苦しい経営を続けている。昨年2月、三つ星レストラン「コート・ドール」のオーナー・シェフ、ベルナール・ロワゾー氏が自殺した。機関投資家のいないオーナー・シェフの場合、三つ星のレベルを維持するための資金確保に精力を使い果たしたのではないかともいわれている。

5)ミシュランも信頼回復のため、体制の立て直しを図っている。「ミシュランは星の裏づけとなる調査内容を明らかにすべきだ。」という意見もあるが、一方でミシュランを擁護する意見もある。ファイナンシアル・タイムズは「覆面調査でこそ保障されるものもある。ミシュランの秘密主義こそ、他のガイドブックと比べて、遥かに信頼と権威を保ってきた秘訣である事を忘れてはならない。」と述べている。


(院長のコメント)
 フランス料理界の話ですが、経営戦略やマスコミへの露出などなど、そのまま医療業界にも通じる話と思って読みました。自分で買って読んだ事はないのですが、 書店に行けば「医療ガイド」の類はいくらでも売っています。しかしミシュラン・ガイドほどの権威と歴史のあるガイドですら、これほど問題を抱えている。いろいろなガイドの中からいかに自分に必要な情報を抜き出すか・・・。なかなか難しいテーマです。そういえば永六輔さんが、テレビでご自分のご家族(たしか奥様だったと思います)を看取ったお話をされていましたが、実に含蓄のあるお話でした。


尖圭コンジロームはお早く
 トピックスというほどの話題ではないのですが、4月に入って毎週のように尖圭(せんけい)コンジロームの手術があります。インターネットなどでご自分がうすうすこの病気ではないかと疑ってはいたけれど、なかなか泌尿器科を受診することができなかったという患者さんが多い。そのためニワトリのトサカのようなデキモノが冠状溝に沿って累々とできている方もみえますし、外尿道口にもできている方もみえます。

 尖圭コンジロームはヒト乳頭腫ウイルス(HPV:Human Papilloma Virus)の感染症ですが、外陰部にブツブツができる病気は尖圭コンジロームだけではありません。第2期の梅毒である扁平コンジローム、伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ:いわゆる水イボ)、pearly penile papule(亀頭冠状溝にできる規則的な微細な隆起、生理的変化)、hairy nymph(小陰唇にできる規則的な微細な隆起、生理的変化)、前癌状態ともいえるBowen氏病、扁平上皮癌などがあります。

 尖圭コンジロームの治療法には電気凝固などの外科的療法、ポドフィリンの塗布、凍結療法、インターフェロンの局所注射などがありますが、当院では電気凝固を行っています。その時に他の病気を否定するために、組織の一部を病理学的
検査に提出しています。ただこのような治療の目標は増殖性尖圭コンジロームの除去と症状の改善であり、原因であるHPVの根絶ではありません。ですから再発して何度も電気凝固をしてみえる患者さんもみえる。「お互いにつらいねぇ。」と言いながら手術の予約をすることになります。

(院長のコメント)
 包茎が尖圭コンジロームのリスク・ファクターになる」という文献を見つけることができなかったのですが、当院では包茎の患者さんに圧倒的に多い。特に再発を繰り返している方は、ほとんどが包茎です。尖圭コンジロームを予防するためには、今のところコンドームを使用するしかありません。

 ○「性感染症治療指針」と「臨床泌尿器科:泌尿器科治療薬マニュアル」を参考にしました。

クラミジアの治療はしっかりと
 治療をしてもクラミジアが陰性化しない患者さんが、立て続けに2例ありました。1例目は合成抗菌剤を7日間、その後マクロライド系抗生剤を5日間内服してもらってから、クラミジアを再検したところ「陽性」でした。患者さんに性交渉の有無、内服をきちんとしたかどうかをしつこく問診しましたが、性交渉もしてないし、内服もきちんとしたとのこと。検査センターにも再検してもらいましたが、やはり陽性でした。さらにマクロライド系抗生剤を5日間内服してもらい、もう一度検査してみたところ陰性化していました。

 2例目は淋菌とクラミジアが同時に陽性であった患者さんですが、淋菌については抗生剤の筋肉注射で治療し、クラミジアについては合成抗菌剤で5日間治療しました。患者さんの事情で治療開始後、5日目に淋菌、クラミジアを再検したのですが、淋菌は陰性化していたのに、クラミジアは「陽性」が持続していました。5日間の合成抗菌剤の投与では短かったのかもしれませんし、この合成抗菌剤のきかないクラミジアなのかもしれません。幸いな事にこの患者さんも別の抗生剤を投与し、陰性化させることができました。今までのところ薬剤耐性のクラミジアは経験した事はないのですが、いよいよ薬剤耐性のクラミジアが出現したのかと冷や汗をかきました。

 クラミジアの治療は合成抗菌剤や抗生剤を少なくとも7日間投与することになっています。クラミジアは症状が乏しいためか、陰性化するまでフォローアップできる患者さんが少ない。当院のデータでも「74%の患者さんがきちんと治癒判定されないまま治療を中断」されました。米国のデータでも「クラミジア89例の治療をしたが、13例が副作用で治療を中止し、25例がフォローアップのための来院がない」という報告もあります。

 クラミジアを放置した場合、男性では尿道狭窄、女性では卵管の障害による不妊や子宮外妊娠、流産や早期破水も起こしやすくなります。また赤ちゃんにも未熟児、低体重児がおきやすいし、肺炎や結膜炎などに罹患することもある。
 さらにクラミジアによる糜爛は、HIV感染(エイズ感染)の危険性も増します。この危険度は米国立疾病防疫センターのデータでは、男性で10〜50倍、女性で50〜300倍に上昇するという報告もあります。

 またクラミジアの陰性化を確認しておかないと、パートナーにも感染させることもある。女性のクラミジア陽性患者さんの男性パートナーのクラミジア陽性率が46%、男性のクラミジア陽性患者さんの女性パートナーのクラミジア陽性率が55%という報告もあります。やはりパートナーともどもきちんと治療し、お互いにクラミジアが陰性化したことをきちんと確認すべきでしょう。

(院長のコメント)
 当院にも外国籍の患者さんが来院されます。外国籍の患者さんに「クラミジア陽性ですよ。」というと、日本人とは全く違ったリアクションをされます。ショックを隠しきれないし、「unprotect sexしちゃったから・・・。でもこんなことはunusualなことなんだけど・・・。」と、とても後悔されます。やはりクラミジア、エイズなどの性行為感染症についての教育や啓蒙が行き届いているんだろうと推測しています。当院を受診された患者さんにはできる限り、このようなお話をするのですが、なかなか啓蒙するという事は難しいことのようです。

○「The 5-minute Urology Consult」、「性感染症治療指針」、「日性感染症会誌」、「選択」を参考にしました。



早期前立腺癌摘出後2割再発
 前立腺癌は高齢化などに伴い急増し、一昨年は8000人が前立腺癌で死亡しています。朝日新聞5月3日の朝刊に厚生労働省研究班(内藤誠二九州大学教授)の報告をまとめた、「早期前立腺癌摘出後2割再発」と題する記事がありました。

1)早期がんと診断されて前立腺摘出術を受けた患者さんのうち、前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSAが術後一定の値を超え、癌細胞の増殖を示す「生化学的再発」と診断された人が18.7%いた。
2)再発までの期間は1年以内が多かったが、4年以上経った例もあった。
3)手術で癌を含む前立腺をとっても、周囲の組織に残った微小な癌が再発すると考えられる。
4)PSA値が上昇しても(生化学的再発をしても)、画像診断などで再発や転移が確認されるためには8年ほどかかる。
5)前立腺癌の多くは発育が遅く、再発してもすぐに命にかかわる事はないが、手術後の継続した経過観察が必要。
7)再発した場合、ホルモン療法、放射線療法があるが、患者さんにどの方法を選べば良いかを明らかにするのが今後の課題。
 
(院長のコメント)
  PSAは前立腺癌の腫瘍マーカーであることは、一般にも随分認知されてきました。ただ誤解して欲しくないのは、PSAが全てではないということ。PSAの正常値は4以下ですが、0〜2でも1%、2〜4でも15%、4〜10で25%、10以上で50%以上の確率で前立腺癌は存在するのです。それとは逆にPSAが上昇していても必ずしも前立腺癌とは限らない。前立腺肥大症や前立腺炎などでも上昇することがあるのです。




腹圧性尿失禁の外科的療法
 膀胱にたまったおしっこの一部が漏れてしまうことを、「尿失禁」といいます。これにはくしゃみや咳、重い物を持った時などについ漏れてしまう「腹圧性尿失禁」、トイレに行きたくなると我慢できずに漏れてしまう「急迫性尿失禁」があります。それ以外にも「溢流性尿失禁」や「機能性尿失禁」などもあります。

 腹圧性尿失禁は骨盤底筋が緩むことによって起きます。骨盤底筋とは骨盤の底で膀胱や子宮、直腸などが下がらないように支えている筋肉群です。骨盤底筋が緩んで収縮する力が弱まると、尿道や膣が十分にしまらなくなってしまい、その結果、咳やくしゃみ、運動などで腹圧がかかると尿が漏れてしまうのです。尿失禁は健康女性の1/2〜1/3にみられるといわれています。出産経験のある女性に多いのですが、出産経験がなくても起きます。

 「腹圧性尿失禁」の治療にはには、大きくわけて保存的療法と外科的療法があります。保存的療法には「骨盤底筋体操」といわれる膀胱訓練と「薬物療法」があります。保存的治療でも患者さんは「しっかり感が出てきた。」とか「外出に不安がなくなった。」とかおっしゃいます。保存的療法が効果がないときや、重症の場合は手術を行う事になります。外科的療法は当院ではできませんので、経験豊富な病院をご紹介しています。

 私が開業する前は、膀胱頸部をナイロン糸などの非吸収糸で持ち上げる「針式膀胱頸部挙上術」(Stamey法など)が主に行われていました。もちろん私自身も何例も経験していますので、この術式、長所や欠点は熟知しているつもりです。しかし最近は尿道の下を帯状のスリングで持ち上げる「尿道スリング手術」が、ファースト・チョイスとなってきています。知識では知っていても実際に見たことがなかったので、患者さんに説明する時に今ひとつ不安なところがありました。お昼休みを利用していつも手術をお願いしている病院で、失禁防止術を見学してきました。

 今回見せていただいた手術は「TVT(tension-free vaginal tape)法」という1993年Ulmstenらが発表した手術法で、現在最もよく行われている方法です。術式の詳細は割愛しますが、「膀胱頸部を持ち上げるのではなく、尿道を支持する」ということ、「決して尿道を持ち上げない」という事がポイントのようでした。手術時間も30分程度と短く、出血もほとんどない患者さんへの負担の少ない手術でした。

 「百聞は一見にしかず」で手術の細部までよく理解でき、さらに自信をもって手術をお勧めできるようになりました。これまでこの病院に何例もお願いしましたが、手術に対する患者さんの満足度は高いようです。


(院長のコメント)
 失禁とは別の訴えで来院された女性の患者さんに、失禁の有無をお尋ねすると、結構な割合で失禁がありま
す。尿失禁で悩んでいるのはあなただけではありません。



前立腺特異抗原(PSA)の考え方
 前立腺特異抗原(以下PSA)が前立腺癌の腫瘍マーカーであるということは、一般にも広く知られてきています。現在人口10万人あたり12人程度の前立腺癌の患者さんがいると報告されており、これは20年前の2〜3倍に増えています。この増加にPSAによる前立腺癌の発見率の向上が関与している事は間違いがないのですが、前立腺癌の発生率そのものも上昇しています。

 PSAは精漿(精液の液の部分)に含まれる糖タンパクで、前立腺上皮細胞に含まれています。正常前立腺ではほぼ全てが精漿中に分泌されますが、前立腺癌では組織の破壊により、血清中に漏れ出してしまう。そのため血清中のPSA測定が前立腺癌の診断や経過観察に有効なのです。

 PSAの値が4.1〜10ng/mlでは20〜30%、10ng/ml以上では30〜50%に前立腺癌が発見されます。ただPSAが正常でも直腸内指診で前立腺に硬結(しこり)を触れる場合には約15%に前立腺癌が発見されます。

 先にも述べたようにPSAは前立腺癌に特異的ではありませんので、前立腺癌以外にも、前立腺肥大症、急性前立腺炎、慢性前立腺炎、尿閉、射精などでも上昇することがあります。また直腸内指診、導尿などの医療行為でも上昇することがあります。

 これとは逆に前立腺肥大症に対する内分泌療法はPSAを低下させることがあります。そのため内分泌療法を行う前には直腸内指診とPSA値を調べて前立腺癌の可能性を否定しておく必要があるのです。

 PSAが4.1〜10ng/mlのグレイ・ゾーンの時に前立腺肥大症と前立腺癌を鑑別することが必要となります。前立腺癌と診断するには前立腺生検が必要ですが、 不必要な前立腺生検を減らすという目的もあって、 PSA F/T比、PSA−ACTなど、さまざまな特異度向上が試みられています。


(院長のコメント)
 前立腺癌の集団検診では受診者の1%に癌が発見されるとされており、この発見率は胃がん、肺がん、子宮頸がん、乳がんなどよりも高いのです。また排尿症状で受診した男性の7%に前立腺癌が発見され、しかも発見された癌の70%が早期がんであったという報告もあります。 どの年齢から前立腺の検査を受けるかというのは難しい問題ですが、前立腺癌が50歳以上の男性でみられることから、この年齢になったら前立腺癌のチェックを受けておくのが良いかと思います。



レビトラ入荷
 6月末に新しいED治療剤である「レビトラ」がバイエルから発売されました。先行発売されたファイザーの「バイアグラ」よりも、内服してから作用発現までの時間が短い、食事の影響が少ないなどが特徴のようです。
 バイアグラは内服から勃起まで約1時間位が必要と言われていますが、レビトラは15〜30分程度で十分な勃起が得られるとされています(ただしレビトラの能書には性交1時間前に内服するようにかいてあります)。バイアグラは食事の影響を受けやすいという欠点がありますが、レビトラはこの欠点がないようです。
 硝酸剤(冠血管を拡張させる薬)と併用できない事はバイアグラ、レビトラとも同じですが、レビトラはこれ以外に抗不整脈剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、α遮断剤とも併用できません。特にα遮断剤は前立腺肥大症の治療薬として、レビトラを使用される患者さんと年齢層がオーバーラップするので、注意が必要でしょう。
 ED治療を希望される場合は、現在内服中のお薬を持って受診される事をお勧めします。

(院長のコメント)
 当院でもバイアグラは50人程度の患者さんに投与してきました。レビトラの発売で選択肢が広がった事は患者さんにとっても私にとってもとても良い事だと思います。6月の発売から今まで3例の患者さんに投与しましたが、1人はバイアグラの方が良かったとおっしゃって、バイアグラに戻しました。お二人はレビトラの方が良いとおっしゃっています。ただ併用禁忌の薬が多いのは処方する側としては、かなり神経を使います。



在宅医療廃棄物の処理

 在宅で介護、看護をされるご家庭も増えてきました。その時に問題になるのがゴミの処理。2003年11月に、名古屋市から「訪問看護における在宅医療廃棄物の安全処理マニュアル」と題した、ゴミ処理についてのガイドラインが出ました。ざっとご紹介しておきますが、ゴミの処理については各自治体によって異なります。名古屋市以外にお住まいの方は是非役所の方にお問い合わせ下さい。

「訪問看護における在宅医療廃棄物の安全処理マニュアル」2003年11月

1)針、注射器:病院、診療所、訪問看護ステーション、薬局へ「持参」するか、あるいは往診医、訪問看護婦に「手渡す」。注射器と針との接続部は外さない。廃棄容器は蓋付で堅牢な容器を使う。ペットボトル、空き缶、ガラス瓶などは使用しない。

2)輸液ライン:輸液ラインの針部を切断し、針部とライン部を別々に廃棄する。ライン部は「不燃用指定袋に入れて不燃ごみ」として出す。針部は上記「針」と同じ扱い。

3)膀胱留置カテーテル:交換時に往診医や訪問看護婦に「持ち帰って」もらう。

4)間欠的自己導尿用カテーテル:衛生的処理の観点から可燃用指定袋に入れて「可燃ごみ」としてだす。袋の口をしっかり閉じて液漏れのないようにする。

5)気管内吸引チューブ、口腔内吸引チューブ:衛生的処理の観点から可燃用指定袋に入れて「可燃ごみ」としてだす。袋の口をしっかり閉じて液漏れのないようにする。

6)プラスチックバッグ類(点滴バッグ、CAPDバッグ、ストーマ袋など): 衛生的処理の観点から可燃用指定袋に入れて「可燃ごみ」としてだす。袋の口をしっかり閉じて液漏れのないようにする。残った点滴液、CAPD排液は棄てて空にする。ストーマ袋の便はトイレに棄てる。

7)ガラス製点滴ボトル:不燃用指定袋に入れて「「不燃ごみ」として出す。残った点滴液は棄ててから出す。

8)空き缶類(缶入りの経管栄養剤など):一般の空き缶と同様、資源ゴミとして出す。

9)紙おむつ、ガーゼ、脱脂綿など: 衛生的処理の観点から可燃用指定袋に入れて「可燃ごみ」としてだす。汚物を取り除いた後、個別に密封して他に触れないようにする。

10)プラスチック手袋:処置などで血液、体液などが付着している場合は、 衛生的処理の観点から可燃用指定袋に入れて「可燃ごみ」としてだす。付着していない場合は、 不燃用指定袋に入れて「不燃ごみ」として出す。

在宅医療廃棄物に関する相談窓口>名古屋市環境局作業課作業係
電話:052−972−2394、ファックス:052−972−4133
http://www.city.nagoya.jp/06kankyozi/gommipanf/kubetuitiran.htm


いつまでもデブと思うなよ

「いつまでもデブと思うなよ」(岡田斗司夫著、新潮新書)という表題につられて読んでみました。著者の岡田さんはみずから考案した「レコーディング・ダイエット」という方法で、1年間で117キロから67キロと50キロものダイエットに成功した方です。

 くわしくは読んでいただくとして、このダイエット方法の要諦はとにかく食べたものを記録して、自分がなぜ太っているかを認識する。その後自分が摂取したカロリー数を計算し、摂取カロリーを減らすという方法です。摂取カロリーの決め方などに、ちょっと首をかしげるところもありますが、全体に至極まっとうなダイエット方法だと思います。

 また岡田さんはダイエットをネガティブなものと考えず、自分を変えるための知的ゲームと、非常にポジティブに捕らえてみえます。ダイエットを「食べることを我慢しなくてはいけないつらいもの」と考えていた僕には、目からウロコでした。

 それで僕も食べたものを記録してみました。それでわかったことは、@自分ではそれほど食べていないつもりでも、かなりのカロリーを摂取していること。Aお酒、間食などのカロリーが、朝、昼、夜の三食のカロリーに匹敵するほどであること。B3000カロリーくらいは簡単に食べられてしまうことの三つでした。

 岡田さんは記録をつけるだけで、どんどん痩せたようですが、いまのところ僕は痩せてはきません。やっぱりダイエットに近道はないようです。(2007年10月25日)



シアリス入荷

 バイアグラ、レビトラに次いで、シアリスが発売になりました。三種類のED治療剤が選べるようになったわけですが、ではどの薬を選べば良いのか。Journal of Sexual Medicine 3:901-909:2006に参考になる報告がありました。詳細は読んでいただくとして、

@試験を完了した90例のうち、25例(27.8%)がバイアグラを、18例(20%)がレビトラを、47例(52.2%)がシアリスを好んだ。

Aシアリスを好んだ理由は

11例:勃起がより硬く、より長く持続する

3例:いつでも服用できるという柔軟さ
5例:次の日に再び性行為に挑めるという気持ち
23例:最初の性行為と同等の質の勃起で、次の日に再び性行為を行うことができる

Bバイアグラを好んだ理由は
21例:勃起がより硬く、より長く持続する
1例:勃起の発現がより早い
3例:質が良いことでシアリスを選んだが、副作用のため最終的にバイアグラを選んだ。

Cレビトラを選んだ理由は
16例:勃起がより硬く、より長く持続する
1例:勃起の発現がより早い
1例:他剤より副作用が少ない

一見シアリスが優位のようですが、僕には単純にはそう思えない。それはこういう調査には、新薬に対する期待、既存の薬に対する不満など、様々なバイアスがかかっていると考えるからです。さらにシアリス、バイアグラ、レビトラともそれを選んだ一番多い理由が「勃起がより硬く、より長く持続する」であるということ。これは人それぞれ合う薬は違うということを示している。合う薬は合うし、合わない薬は合わない。そしてそれは使ってみなければわからないということだからです。(2007年10月25日)

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